生態系への毒性を
評価する

都市環境工学コース
中島 典之 准教授

生態系への毒性評価とは

世の中には化学物質がたくさんあります。それらの中には人間の健康には影響が小さいけれども、他の生物に影響を及ぼすものがあります。また河川や湖沼・海洋の水や泥にはさまざまな物質が含まれています。単一の化学物質や、中身の分からない複合的な環境試料について、藻類やミジンコ、魚などを用いて、その成長や産卵数などへの影響を見ることで、人間以外の生物への影響が分かります。

生態系への毒性を評価する

なぜ生態系への毒性を研究するのか

飲料水の水質基準は人間が一生涯飲んでも健康に影響が出ないような基準を作っています。一方で河川や湖沼・海洋についてはどうすべきでしょうか。人間にとって飲んでも大丈夫、あるいは農業や工業に使うのに問題がない、という視点だけで十分でしょうか。生態系保全の重要性については否定されることはないと思いますが、しかしどの程度の化学物質がどのように実際の環境中で影響を与えるのか、ということを考慮しつつ環境の質を管理するのは決して簡単ではありません。いまだ研究途上の分野です。

生態系への毒性を評価する

どのような研究を現在進めているか

環境中での有害物質の動態という観点と、底質汚染という観点に特に着目して研究を進めています。平成22年度に指導した学生の学位論文の題目は「雨天時流出過程における道路塵埃の毒性評価とwhole sediment TIE手法による毒性要因推定」「下水処理水中溶存有機物における亜鉛錯体形成能の紫外線照射による変化」「ニホンドロソコエビを用いた底質毒性試験における種内捕食防止法と新規毒性指標の検討」です。河川や沿岸域などの調査、実験室内での生物を用いた毒性試験、化学分析手法による有害物質のbioavailabilityの評価、といったようなことが実際の作業の内容になります。

生態系への毒性を評価する

今後の研究の展開について

たとえば、水生生物保全のための水質環境基準として全亜鉛が平成15年から設定されていますが、亜鉛の毒性は例えば共存する有機物によって大きく変わります。「全」亜鉛での評価は簡便ですが、より現実に近い評価をすることが、有限な資源の下でのあるべき環境管理の姿ではないかと思っています。将来の目標設定のあり方につながる研究を目指しています。そのためには丁寧にデータを積み重ねて事実を明らかにする作業に加えて、どこかで思い切って簡略化する大胆なアイデアが必要になると感じています。 水質や底質のモニタリングデータはかなり整ってきていますが、底質毒性という観点での情報が日本では非常に限られています。汚染物質の長期的な蓄積や、水域生態系における底生生物の重要性を考えれば、もっと調べられるべきでしょう。現場でどんな物質が生物への影響という観点で一番問題なのか、その起源は何なのか、という疑問に答えられるような知見を積み重ねていきたいです。