地下水の
有効利用に向けて

都市環境工学コース
滝沢 智 教授

都市における水の役割

都市の中で「水」は様々な役割を果たしています。多くの人が集まる都市にいかにして安全な水を、効率よく、安定して供給するかは大きな課題です。これまで、日本は水資源開発や水道施設の建設・運営でこの目的を果たしてきました。それだけでなく、水は都市の生活者に潤いを与える効果もあります。昔から、日本の庭園には湧水を利用した池が作られていましたし、東京には多くの湧水がありました。また、地震災害などでは、都市の中の水源として、湧水や地下水が被災者の生活を支える重要な役割を果たすと考えられています。

なぜ都市域の地下水を研究するのか

このように、水は都市の中で重要な役割を果たしていますが、私たち都市の住民は、その恩恵を忘れがちです。なかでも、地下水は1970年ごろまでは日本の多くの都市で使われていましたが、地下水の過剰なくみ上げにより地盤沈下を起こすなどの問題が発生したため、多くの大都市で地下水利用が規制されました。そのため、現在では地下水の水位が回復しつつありますが、このことが逆に都市の地下にあるインフラに影響を及ぼすことがわかってきました。また、戦前はたくさんあった東京の湧水は、都市開発によって失われたり水量が激減し、もはや市民の憩いの場とは言えません。日本の都市は、都市の外に水源を求め、それによって毎日の生活が維持されていますが、都市の住民の責任ある行動として、都市の中の水源としての地下水や湧水を見直して、それを守り、復活させることが必要ではないでしょうか?

現在進めている研究

都市の中の大切な水源である、地下水を守り、適切に利用するための研究を行っています。地下水は河川の水とは異なり、どこから流れてきたのかを知ることも容易ではありません。地下水が汚染された場合も、その汚染源を特定することは極めて難しいといえます。そのため、地下水のモニタリングが欠かせませんが、当研究室では、都市の下にある地下水が、人間の様々な活動によってどのように影響を受け汚染をされるのか、いろいろな物質をトレーサーとして調査をしています。これらのトレーサーとして使わせるのは、医薬品や病院のMRIで使われる薬品など、自然界には存在しない微量物質を地下水から検出することで、汚染の進行具合を推定することも含まれています。
また、湧水の復活に関する調査としては、新宿区にあるおとめ山公園の拡張工事にともなって、新宿区と協力しながら、土地利用と地下水の浸透量との関係を調べ、公園の計画に役立てています。

地下水の有効利用に向けて

2地下水の調査は、国内だけでなく、海外でも行っています。例えば、ベトナムのハノイでは地下水が重要な飲料水減となっていますが、場所によってヒ素やアンモニアなどに汚染されています。また、タイのランプン地方では、地下水から高濃度のフッ素が検出され、地下水を利用している住民に健康被害が出ています。これらの地域で、現地の大学や研究機関と協力して地下水の汚染原因を調査し、汚染物質を取り除く技術の開発をしています。

地下水の有効利用に向けて

地下水の有効利用に向けて

今後の研究の展開

2011年3月11日の東北関東大震災では、東北地方を中心に大きな被害を受けました。被災後の避難者は水やガスなどのインフラが壊滅したため、大変厳しい生活を強いられましたが、なかでも地下水を水源とした町では、非常用の給水車により給水が可能であっただけでなく、いち早く復旧が可能となりました。
都市の中で、地下水を守り、大切に利用するためには、これからも地下水の汚染源をいち早く突き止め、汚染防止に貢献することが必要です。それだけでなく、貴重な資源としての地下水をみんなで利用してゆくためのルール作りにも、科学的な知識や技術を役立てたいと考えています。
また、海外では地下水が唯一の飲料水減であるにもかかわらず、汚染により健康被害が出ている国や地域がたくさんあります。これらの地域で、より安全な地下水の利用方法を、現地の大学など研究機関と一緒に考え、あたらしい技術の開発に貢献したいと思います。